建築パースは建築物の設計時に、必ず必要になります。
素人はもちろん、専門家でも平面図だけではイメージがしにくいため、最近では立体的な建築パースを用いて打ち合わせを行うことがほとんどです。
でも正直、「そもそもパースって何?」「普通の立体図とは何が違うの?」という疑問を持っている方も多いですよね。
そこでこの記事では、
・建築パースの概要
・建築パースを使うメリットデメリット
・建築パースの種類とそれぞれの使用用途
などについてご紹介いたします。
また、初心者向けに基本の一点透視図法についての書き方も記載しています。
初心者の方も安心して、読み進めてください。
初心者でも分かる建築パースとは?
建築パースとは、建築物に用いられる立体的に絵を描く図法のことです。
設計図は平面図が主に用いられるため、立体的に構造を捉えることが難しいです。
そこで建築パースの出番になります。
パースとは、「Perspective Drawing(透視図)」の略です。
透視図というのは、簡単にいうと遠近法を用いた立体図です。
つまり単なる立体的な絵ではなく、実際に目で見たときと同じように見える図ということです。
冒頭でも触れた通り、平面図だけをみるより建築パースとして立体で確認をした方が、よりイメージしやすく直感的にわかりやすいです。
そのため現在では、設計段階での打ち合わせや施工主へのプレゼンテーションなど、様々な場面で用いられます。
もはや建築関係の方では、必須の知識になっているので、ここでしっかり学んでおきましょう。
建築パースを利用するメリット3つ
建築パースは、直感的に立体をイメージできることから様々なメリットがあります。ここでは以下の3つについて
①正確にイメージを伝えられる
②デザイン修正に役立つ
③提案力の強化
上記を順番に説明します。
①正確にイメージを伝えられる
まず、建築パースを利用するメリットの一つとして、正確にイメージを伝えられることがあります。
建築物の設計を行ったのち、その外観や内観について平面図からイメージすることのできない方に対しても正確にイメージを伝えることができます。模型を作ればもちろんわかりやすいですが、非常に手間がかかるのと、内観などは建築パースの方が見やすいです(模型は小さくなり細かいところがわかりにくくなります)。
このように正確にイメージを伝えることで、お客様は安心して発注することができます。また、トラブル回避にも役立ちます。お互いにイメージの相違があると、建築物完成後にトラブルになります。建築パースとしてモデルとして出来上がったものがあれば、そのような相違も無くなります。
②デザイン修正に役立つ
次に、建築パースを利用するメリットとして、デザイン修正にも役立ちます。
お客様(施工主)がデザインに対して意見できることが重要なメリットになります。平面図だけでは、イメージが湧かないため、修正点を指摘できる素人の方はほとんどいません。建築パースがあることで、誰でも直感的に理解できるため、素人でも自分の要望をハッキリと正確に伝えることができます。
このように、設計の打ち合わせの時間短縮や、要望を取り入れたものを作りやすくなるというメリットがあります。
また模型ではデザインの修正に手間がかかりますが、建築パースであれば修正にそこまで時間はかからないというメリットもあります。
③提案力の強化
さらに、建築パースを利用するメリットとして、提案力の強化も期待できます。
建築パースを営業に用いることも多いです。建築物の外観と内観を立体的にわかりやすく伝えるだけではなく、建築物の周りの環境(植物など)を描くことでよりイメージが湧きやすくなります。
このように提案時の見た目が良いというだけでも、成約率は高くなります。全く同じ建造物で、全く同じ金額であった場合、建築パースとしてよりクオリティの高いものを提案した会社が選ばれるのではないでしょうか?建築パースは会社の技術力やセンスを示すためにも有用です。
建築パースを利用する際のデメリット2つ
建築パースは基本的にはメリットが多いものですが、制作負担がかかるという面ではデメリットもあります。
主に以下の2つあります。
①コストがかかる
②外注依頼先の不備
①コストがかかる
建築パースとして平面図にプラスして絵を描くことになるので、その分時間や人件費などのコストがかかります。また、専門的な知識や実績、センスも問われますので、これらを制作できる人材を確保する必要もあります。
パースの利用方法にもよりますが、パースのクオリティによって成約率が変わる場合などは、それだけ時間とコストをかけて制作する必要があります。建築棟数が少ない場合、専門の人材を固定して雇うことが難しいため、小さい工務店などでは建築パース作成を外注しているところもあります。
②外注依頼先の不備
また、建築パース作成は外注することもできます。
外注することにより、コスト削減を図ることはできますが、外注したことによるデメリットもあります。
外注先とうまくクオリティ面でコミュニケーションが取れなかったり、要望を反映させるまで時間がかかる可能性です。また、発注側がパースの細かいミスに気づかなかった場合、施工時に問題になることもあるので、チェックも重要になります。
ただ基本的にはデメリットよりもメリットが大きく、外注先も信頼できるところに依頼すれば、上記のデメリットもありません。
これから導入を考えている方は、外注先をうまく探すことが重要になりそうです。
建築パースの種類とそれぞれの使用用途とは?
つぎに、建築パースの種類とそれぞれの使用用途を解説します。
建築パースには下記のような種類があります。
・外観パース
・内観パース
・CGパース
それぞれがどのような建築パースなのか、使用用途と共に紹介していきます。
外観パースの使用用途について解説
建物が完成した際、その実物をある地点から見た場合、どのように見えるかをCGなどで作成したものになります。
建物の外観の形状や、デザインを確認することができます。平面図や部材の名称だけでは確認できないことを、1枚の絵から直感的に把握できます。
外観パースの使用用途は、提案時にデザイン共有のために用いられます。周辺環境(道路などなど)も描くことにより、完成した建物のイメージをより正確に表すこともあります。平面図だけではこれらのことは分からないため、商業施設や公共施設、ビル・マンションなどの大規模の建造物設計には必ず外観パースが作成されます。
詳細は建築外観パースとは?手書きや書き方、種類を解説のページを参照してください。
内観パースの使用用途について解説
内観パースとは、室内空間を立体的に把握しやすく描いたものです。内装デザインについてより詳細に表現するために用いられることが多いです。
天井・壁のデザインだけでなく、照明や家具などのデザイン・配置も行った内観パースを描くことで、直感的に内装の雰囲気を把握することができます。店舗などで用いられることが多く、家具や照明、クロスの雰囲気が調和しているかなどを確認します。
詳細は建築内観パースとは?手書きや書き方から種類まで解説のページを参照してください。
CGパースの使用用途について解説
CGパースは、専用のソフトを用いて平面図から3Dに視覚化して描いたものです。写真に近い画像にすることができ、昼間や夜などの効果を簡単に表現することができます。1つの建造物だけではなく、都市計画などにも用いられます。一般的に建築パースは大規模な工事になる程、CGで作られることが多いです。
また、工業製品などの物にもCGパースは用いられます。表面のテクスチャーを変更したり、様々な変更を容易にすることができるため、製品等の外観デザインによく用いられます。
詳細は建築CGパースとは?種類や効果的な使い方を徹底解説のページを参照してください。
初心者向け建築パースの書き方
建築パースはソフトを用いれば、比較的簡単にパースも崩れずに描くことができます。しかし、お客様と打ち合わせをしながらイメージを共有するために手書きパースが必要になることも多いです。また、しっかりとしたパースを描けることでお客様からの信頼も上がります。
建築パースですが、まずは基本に忠実に描いていくことが上達する近道です。
建築パース一点透視図法の書き方
・消失点、アイレベルを決める
目線を決め、パースの線画集まる点を決めることで補助ラインを引きます。
・部屋の奥の壁を描く
まず四角を描き、壁の基準を作ります。この際に等間隔でグリッド線を引くことで、サイズ感を決めることができます。1辺を4等分して、1つの区切りが1000mmなどと大体の比率で描いても問題ありません。
・消失点から壁の四隅に補助線を引く
・対角線を引くことで壁の中心を把握する
・ドア、窓、家具などの四角く、パースがわかりやすいものを描く
この際、それぞれのおおよその寸法を覚えておくことで、どのような大きさで描いていけば良いかがわかるようになります。またその寸法に合わせて描くことで、アイレベルに合わせたオブジェクトを置いていくことができます。
以上のように描いていくことで慣れてくると定規を使わなくてもある程度描けるようになります。描くスピードも重要ですので、真っ直ぐの線を引くということも練習してみましょう。
初心者でも分かる建築パースのまとめ
建築パースは、建築物に用いられる透視図(遠近法を用いた図)でこれらの大きく3つメリットがあります。
①正確にイメージを伝えられる
②デザイン修正に役立つ
③提案力の強化
デメリットとしては、作成するために負担がかかることで、以下の2つが挙げられます。
①コストがかかる
②外注依頼先の不備
建築パースは種類があり、用途によって以下のように使い分けられます。
・外観パース(外観デザイン)
・内観パース(内装デザイン)
・CGパース(建築物全般、工業製品にも)
建築パースは、イメージを複数人と共有するために非常に重要なもので、設計時には欠かせないものとなっています。建築士は手書きでパースをかけるスキルも必要とされ、建築士同士の初期の打ち合わせや、お客様との初期段階での設計イメージを共有する際に描きます。


